子どもの貧血(鉄分不足)について解説しています。子どもの貧血の危険性や、起きてしまう原因、必要な鉄分量や、簡単に鉄分を摂らせる方法も記載しています。ぜひご参考にしてください。
子どもの鉄分不足がもたらす危険性

脳や神経系の発達に影響を与える可能性がある
子どもの鉄分不足は成人と異なる側面を持ち、発育上重要な意味があります。
鉄は脳と神経系に重要な働きをし、出生直後から急速に脳に取り込まれます。鉄は神経伝達物質の合成などに必要で、特に胎児期後半から2歳までの時期に鉄欠乏があると、脳の発達に深刻な影響を与える可能性があります。
実際、貧血は乳児期から小児期の血液疾患の中で最も頻度が高い病気です。そして子どもの貧血において、発達障害・精神神経症状が見られることが多いとされています。
具体的には、下記のような症状が出ると言われています。
子どもの鉄不足が引き起こす症状例 | |||
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スポーツ貧血 | 怒りっぽくなる | 疲れやすくなる | めまい |
発達障害 | 発育障害 | 情緒障害 | - |
参考:加藤陽子. Ⅱ.鉄欠乏 2. 小児と思春期の鉄欠乏性貧血. 日本内科学会雑誌第99巻第6号. 2010
子どもの鉄分不足が起こる原因

【乳児期早期】体内の鉄分貯蔵量が不十分で起こる
乳児期早期の子どもの鉄欠乏性貧血は、妊娠中のお母さんからの鉄を充分にもらえなかったことに由来します。鉄不足のお母さんから生まれた子どもは、生まれるまでに充分な鉄を体内に蓄えられないため、鉄不足に陥りやすいです。
【思春期】身体の急な発育・月経が原因で起こる
離乳期、特に生後9ヶ月以降の鉄欠乏性貧血は、離乳食での鉄分補給が不十分なことに由来することが多いです。お母さんからもらった鉄が枯渇する時期であり、身体の急な発育に伴って鉄の需要が増大するため、鉄不足になりやすいです。
【幼児・学童】牛乳をたくさん飲むことで貧血が起こる
幼児期に入ると、牛乳を飲む量が増えます。それにより牛乳貧血と呼ばれる鉄欠乏性貧血に陥りやすいです。牛乳は母乳より鉄の吸収量が少なく、たくさん飲むことでご飯をあまりたべられなくなるため、食事量が減ってしまうことなどが原因となります。
【思春期】身体の急な発育・月経が原因で起こる
思春期は身体が急に大きくなるタイミングです。鉄の需要が増大する一方で、中学生・高校生は部活動など運動をするようになり、月経も始まり鉄を失う機会が増えることが理由で鉄欠乏性貧血になりやすいです。また、ダイエットによる鉄摂取不足も原因になります。
参考:加藤陽子. Ⅱ.鉄欠乏 2. 小児と思春期の鉄欠乏性貧血. 日本内科学会雑誌第99巻第6号. 2010.32-33子どもが1日に必要な鉄分量(mg/日)
子どもが1日に必要な鉄分量は、年齢によって異なります。女の子は月経が始まると必要摂取量が大きく増えるため、特に思春期には注意が必要です。
年齢 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
推奨 | 推奨 | ||
月経無し | 月経あり | ||
0~5(月) | - | - | - |
6~11(月) | 5.0 | 4.5 | - |
1~2(歳) | 4.5 | 4.5 | - |
3~5(歳) | 5.5 | 5.0 | - |
6~7(歳) | 6.5 | 6.5 | - |
8~9(歳) | 8.0 | 8.5 | - |
10~11(歳) | 10.0 | 10.0 | 14.0 |
12~14(歳) | 11.5 | 10.0 | 14.0 |
15~17(歳) | 9.5 | 8.5 | 10.5 |
18~29(歳) | 7.0 | 8.5 | 10.5 |
子どもに簡単に鉄分を摂らせる方法

離乳期はフォローアップミルクを使う
離乳期に入って離乳が進まず、鉄不足の心配がある場合はフォローアップミルクを与えた方が良いケースがあります。フォローアップミルクは、体重が順調に増加しない場合などに使うこともあります。医師に相談の上で、鉄分の補給に使用してください。
参考:「厚生労働省. 授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」食事に取り入れやすい食材を使う
基本的に鉄分は食事から摂取しましょう。食事に取り入れやすく子どもでも食べやすい、あさりや干しエビなどに加え、赤身肉や赤身のお魚を与えてあげてください。
足りない栄養はサプリメントで補うのも候補
食が細かったり、偏食気味のお子さんは少なくありません。しかしそうなると、鉄分も充分に補給できない可能性があります。その場合は、サプリメントで補うことも候補に入れてみてください。
子どもでも飲みやすいパウダー状の鉄分サプリも出て来ているので、検討してみるのも良いでしょう。