スポーツ貧血(運動性貧血)に関する情報を掲載しています。スポーツ貧血が起こる原因と貧血との違い、症状や改善・予防方法も紹介しております。陸上競技や水泳のアスリートなど、日頃から激しい運動をされている方はぜひご覧ください。
スポーツ貧血とは?

激しい運動が原因で起こる貧血
スポーツ貧血とは、運動性貧血とも呼ばれる、激しい運動に伴って起こる貧血の俗称です。実際は鉄欠乏性貧血であることが多いと言われています。
参考:Russ, Brian S. PT, DPT. Anemia: Considerations for the Athletic Population. Strength and Conditioning Journal 44(6):p 47-57, December 2022.特徴的なのはヘモグロビン値が正常で、フェリチン値が減少した状態
アスリートに特徴的な貧血の一つが、ヘモグロビン値が正常でありながらフェリチンが減少した状態、つまり体内の鉄貯蔵量が減少した状態が持続することです。ヘモグロビン値が正常であるため厳密には貧血ではなく、潜在的鉄欠乏という状態を指します。
この状態で鉄分を補給することに対しては是非がありますが、潜在的鉄欠乏状態での鉄欠乏が、運動パフォーマンスを改善させる可能性があると言われています。
スポーツ貧血が起こる原因
スポーツ活動に伴い鉄の需要増加・消耗・損失が起こる
スポーツ貧血の原因は、スポーツ活動に伴う鉄の需要増加・消耗・損失です。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター紀要によれば、運動に伴う貧血の原因は、下記であると言われています。
| 鉄分の吸収を促進する食べ合わせ |
|---|
| ・成長や筋肉量増大による鉄需要の増加 ・汗からの鉄の喪失 ・運動に伴う溶血や赤血球破壊の亢進 ・消化管. 尿路系からの出血 ・トレーニングによる疲労とそれに伴う経口摂取量の低下 ・一過性の循環血漿量増加に伴う希釈性の貧血 |
スポーツ活動だけが原因で貧血になるわけではない
スポーツ貧血と呼ばれてこそいますが、スポーツ選手が一般人より鉄欠乏性貧血の罹患率が高いかという点には、否定的な報告が多いようです。栄養バランスを考慮した食事を摂取しているかどうかが、重要な要素であるとも言われています。
出典:石田浩之. スポーツと貧血―ヘモグロビン正常、フェリチン低下にどう対応するか?―. 2012年慶應義塾大学スポーツ医学研究センター紀要.10.表1エネルギー不足が原因になることもある
また、エネルギーの不足が原因もスポーツ貧血の原因となり得ます。エネルギーが不足すると造血に回すべきタンパク質をエネルギーとして使わなくてはならず、結果貧血に繋がります。特に体型を気にする女性アスリートは、エネルギー摂取量にも注意が必要です。
スポーツ貧血と貧血の違い
治療対象となる数値の基準が厳しくなることがある
スポーツ貧血の危険性があるアスリートは、治療対象となる数値の基準が一般人比で厳しくなることがあるようです。これは、運動に伴う鉄の需要増加・消耗・損失に由来していると考えられます。
具体的には、このような診断の基準値があるようです。
| ヘモグロビン(g/dl) | フェリチン(ng/ml) | |
|---|---|---|
| 一般人の貧血 | 男:13以上 女:12以上 |
12以上 |
| スポーツ貧血 | 男:14~15以上 女:13~14以上 |
男:40~50以上 女:30~40以上 |
スポーツ貧血の症状

疲れやすかったり、息切れをしやすくなる
スポーツ貧血になると酸素運搬能力が低下するため、結果的に体に酸素がいきわたらず、運動能力の低下に繋がることがあります。具体的には鉄欠乏性貧血と同じく、倦怠感や疲労感、動悸や息切れに繋がります。
スポーツ貧血になりやすい競技
トライアスロン・長距離走など体に繰り返し衝撃が与えられる競技
トライアスロン選手や長距離ランナーは、約50%もの割合で貧血であるとされています。身体に繰り返し衝撃が与えられる陸上競技や、剣道、バスケットボール、バレーボールなどの競技では、運動に伴う溶血が起こり、鉄が失われやすいです。
参考:Russ, Brian S. PT, DPT. Anemia: Considerations for the Athletic Population. Strength and Conditioning Journal 44(6):p 47-57, December 2022.スポーツ貧血の改善方法

バランスよく食事を摂ることが一番
スポーツ貧血を改善する上で最も重要なのは、バランスを意識して食事を摂ることです。鉄分はもちろん、タンパク質やエネルギーを充分に摂取する必要があります。特に女性の方は体型を気にしてエネルギーを抑えると、スポーツ貧血に繋がりやすいので要注意です。
医師の指導のもとで鉄剤を服用する
医師からスポーツ貧血や鉄欠乏性貧血と診断をされた場合、治療に鉄剤を使用することがあります。その他の栄養指導にも従いながら、貧血を治していきましょう。
スポーツ貧血の予防方法
サプリメントなども併用しながら、バランスよく栄養補給
スポーツ貧血の予防として一番大切なのは、日頃からバランスを意識して栄養補給をすることです。日頃の食事で足りなければ、鉄分サプリなども併用していくことをおすすめします。鉄分の多い食品などは、下記リンク先の記事でも紹介しておりますので、ご覧ください。




